【12/23-1/5】注目のスタートアップ資金調達

2022年12月23日から2023年1月5日に発表された資金調達ニュースのうち、JP Startups(ジャパスタ)が注目する案件をピックアップしてお届けいたします。

編集部コメント

2022年12月末から2023年1月初週の資金調達は、VRゲームを開発・運用するジーゼが5.5億円を調達するなど、生活者に身近な領域のスタートアップによる資金調達が多かった印象だ。

そんな中、アパレル・雑貨業界の構造変革を目指すhomulaと、宇宙ビジネスに切り込む天地人、インターステラテクノロジズの3社による資金調達が大きく目立った。本稿ではこれらのスタートアップをピックアップして紹介する。特に宇宙ビジネスは現在の世界情勢も相まって、世界的に大きな注目を集めている領域。2023年は宇宙に関連したディープテックスタートアップの多くが躍進する年になるかもしれない。

※リリース内でラウンド明示ないものもあるが調達総額順に編集部判断でプロット

Series A

アパレル業界のBtoBマーケットプレイスを手がけるhomula、シリーズAで累計約3.2億円を調達(2022年12月28日発表)

Credit : 同社プレスリリース

セレクトショップ・雑貨店とファッション・ライフスタイルブランド間の取引を効率化するマーケットプレイス「homula(ホムラ)」を手がける株式会社homula。同社は12月、ニッセイ・キャピタルをリード投資家として、HIRAC FUND、Globe Advisors Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達額は累計で約3.2億円となる。同社は2022年9月末時点の取引総額が前年同期比19倍と、現在急成長を遂げている。そのような背景もあり、今回の資金調達では顧客基盤の拡充とプロダクトの改善、人材採用の強化を目的としているという。

homulaが見据えるのは、小売業の中でも「アパレル、服飾・生活雑貨、インテリア製品」を扱う約10兆円規模の市場。この領域ではtoC取引でEC化が進んでいるものの、toB取引においては約9割がオフライン店舗を展開し、仕入れ先/卸先の開拓は展示会や知人経由で行うなど旧態依然とした仕組みが根強く残っている。また、小規模店ではファイナンスや在庫のリスク、与信の課題などもあり、小売店とブランドの双方で生産性が高まらない状況もあった。homulaはフィンテックやAIなどのテクノロジーを用いたマーケットプレイスを構築することで、それらの課題解決を目指している。マーケットプレイス「homula」は決済・資金回収をすべてプラットフォーム上で行えるほか、60日を超える掛売り、初回取引の返品が可能。LA発のグローバル・ライフスタイル・ブランド「GUESS」やフランスの歴史あるブランド「LANVIN(ランバン)」を扱うコロネット株式会社など、国内外の大手企業による進出も進んでいる。元リリースはこちら

JAXA認定の宇宙スタートアップ天地人が、シリーズAで個人投資家より資金調達を実施(2022年12月27日発表)

Credit : 同社プレスリリース

株式会社天地人は、株式会社JMDC 創業者・木村真也氏、岡田隆太朗氏、尾﨑典明氏より資金調達を実施した。今回の調達は、宇宙ビッグデータを活用した独自開発の土地評価サービス「天地人コンパス」の事業開発と世界展開も視野に入れた組織体制の強化を目的としている。

同社の扱う宇宙データは気象情報や地形情報など多岐にわたり、日本が得意とする地球観測衛星での衛星リモートセンシングを活用して取得している。統計・推計データなども扱うことができ、「天地人コンパス」では各種データを地図上に重ね合わせることで、特定の条件にマッチする場所を視覚的に探し出すことができる。農作物の生育条件に合う土地を探すといった一次産業での活用や、不動産、エネルギー、流通、観光・旅行などの幅広い分野での活用が期待されている。同サービス内で使用する独自技術は特許申請済み。

株式会社天地人は、複数事業の立ち上げ経験がある起業家の桜庭 康人氏(天地人CEO)と、人工衛星の構造設計や構造解析を専門とするJAXA職員・百束 泰俊氏(天地人COO)が出会ったことで創業されたスタートアップ。内閣府やJAXA、ANAなどが実行委員会を務める宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2018」で3つの賞に輝いたほか、内閣府の「宇宙開発利用大賞」で農林水産大臣賞を受賞、国内外のその他コンテストでも13度の受賞実績がある。事業としてはすでに「天地人コンパス」 を活用した米の生産を2021年より実施しているほか、2022年には西アフリカで豪雨による農作物被害の軽減を目指したモバイルアプリの開発なども行っている。同社は今後、世界へのより良いサービス提供を目指して、環境問題への取り組みを強化していくという。元リリースはこちら

Series C

堀江貴文氏が創業、ロケット開発を行うインターステラテクノロジズがSBIインベストメントより10億円を調達(2022年12月27日発表)

安価な宇宙輸送サービスと宇宙利用の実現を目指すインターステラテクノロジズ株式会社が、SBIホールディングス株式会社の連結子会社であるSBIインベストメント株式会社の運営するファンドを引受先とした第三者割当増資により10億円の資金調達を完了した。SBIインベストメントによるロケット分野への出資は今回が初。インターステラテクノロジズは、調達した資金を開発中の超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の研究開発や設備投資、材料費、人材採用などに充てる予定だという。

宇宙関連の市場は、世界で拡大を続けている。モルガン・スタンレーによれば、宇宙ビジネスの市場規模は2040年に世界で1兆ドルを超える見込み。近年はインターネット通信やデータ活用の観点から小型サイズの人工衛星の需要が特に伸びているが、国内におけるロケット打ち上げ回数は世界シェアの約2%とごくわずかで、国内開発の衛星は宇宙への輸送を海外ロケットに依存している状況がある。昨年からはウクライナ情勢の影響を大きく受け、経済安全保障の点から宇宙輸送強化への関心が世界的に高まった。日本でも昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」の中で、ロケット打ち上げ能力の強化を方針として示している。

起業家の堀江 貴文氏も創業者に加わり、2013年に設立されたインターステラテクノロジズ。宇宙ビジネスに向けた活動自体は2005年から行っており、千葉県や北海道でのロケットエンジンの開発を経て、現在のロケット開発に至っている。同社の開発した観測ロケット「MOMO」は、2019年に民間企業単独としては初の宇宙空間到達に成功。現在開発中のロケット「ZERO」はすべての開発工程を自社で行い、1機あたり6億円以下と低価格を実現させる。人工衛星開発の100%子会社Our Starsも設立し、今後は国内初の「ロケット×人工衛星」の垂直統合サービスを目指しているという。元リリースはこちら

市岡 光子
フリーのライター・編集。広報として大学職員、PR会社、スタートアップ創出ベンチャーを経験後、ライターとして独立。書籍や企業のオウンドメディア、大手メディアで執筆。スタートアップの広報にも従事中。